相続財産の悩みのタネ~不要な不動産を手放す手段4選~
相続が発生したときには相続財産を確定することが必要となります。それでは相続財産とは一体何を指すのでしょうか。その答えは民法第896条に定められています。
『相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。』とあり、被相続人の一身に専属していたもの(委任契約上の権利義務、生活保護を受ける地位などの被相続人だけに属する権利や義務のこと)以外は全て相続財産です。つまりプラスの財産、マイナスの財産全てです。
プラスの財産といえば預貯金、有価証券などが思い浮かびます。マイナスの財産といえば借金でしょう。
それでは不動産はどうでしょうか。かつてはプラスの財産の筆頭であったはずの不動産は、今や相続人の方々を悩ますタネでもあり、ものによってはマイナスの財産とまで言われるようになってしまいました。理由としては、不動産は所有しているだけで固定資産税という税金が毎年課税されます。さらに土地なら土地の、建物なら建物の、それぞれ管理が必要であるという点があげられます。不動産は常に公の目に晒され、隣地所有者はじめ様々な他者の介入がありますので、管理が不十分だと他人に迷惑をかけてしまいます。
今回はご自身にとって不動産がマイナス寄りの相続財産であった場合、手放す方法についていくつか取り上げてみたいと思います。
売却・贈与
オーソドックスな不動産を手放す手段です。売却ならば対価として金銭が手に入り、贈与ならば無償で手放すこととなりますが、以後の管理にかかる費用や手間をなくすことができます。
また、もし不動産を複数名で持ち合っている場合は自分の持分だけを手放すことも可能です。その場合自分だけがその不動産とは関りがなくなり、持分を取得した人が自分の代わりに他の共有者と一緒に不動産を維持管理していくことになります。
しかし所有者の方が手放したいと感じている不動産は、他の方にとっても需要がないことが大半です。この傾向は残念ながら少子高齢化が進む日本では止められない流れでしょう。相続のタイミングでご自身、更にご自身の下の世代が所有の不動産の管理について負担を感じられる場合は、売却・贈与で手放せるうちに手放しておくことは良いことかもしれません。
ただ、先ほども述べたように不動産は公の目に晒され、隣地所有者が必ずいるものです。不動産を引き渡す人が果たして信頼に足る人なのか、その見極めは非常に難しいです。さらに不動産を手放したいという所有者の方の願望につけ込む詐欺もありますので、注意が必要です。
なお、農地(田・畑)については売却・贈与に際し農業委員会の許可を要しますので、それ以外の土地に比べてハードルが上がります。
国や地方公共団体等への寄附
売却に出しても買い手がおらず、無償だとしても引き取ってくれる人もいない。それでも不動産を手放したい場合は公的な組織に寄付という方法も考えられます。
しかし近年寄付の申し出も多く、そして自治体等も管理の手間、かかる費用を鑑みるとなかなか寄附すら受けてもらえないというのが実情なようです。
ですがこの辺りは受け入れる自治体、対象の不動産によって変動し、要件も様々です。まずは不動産所在地の自治体等に問い合わせをしてみてはいかがでしょうか。
相続放棄
「預貯金は相続するけど不動産はいらない…不動産だけ相続放棄をしたい。」といういいとこ取りは、残念ながらできません。
相続するならばプラスの財産もマイナスの財産も全てを相続、相続放棄するならばプラスの財産もマイナスの財産も全てを相続放棄、ということになります。
また、相続開始からまたは自身が相続人であることを知ってから3か月以内という期間の制限もあります。
ちなみに相続放棄をしたあとの相続財産の管理義務については、令和5年4月からの改正民法で明記されています。相続放棄をした瞬間から一切不動産と縁が切れるわけではないケースもある点に注意が必要です。
相続土地国庫帰属制度
不動産を手放したいという国民の高まるニーズに応える形で令和5年4月27日より始まった新しい制度です。
国が引き取るための基準は明確に示されており、基準を満たしていれば国は引き取ってくれるということになります。
負担金が必要であったり、共有の場合の自己持分のみの処分という概念がなく共有者全員での申請が必要であるものの、上記1〜3の手段のデメリットについてはカバーができる制度です。信頼できる国に自身の不動産を託されたいという方は、ぜひ利用を検討してみてはいかがでしょうか。窓口の法務局では相続土地国庫帰属制度についての無料相談を行っています。
手放せるうちに手続きを!
不動産を手放したいと思われたときに、考えられる手段をご紹介いたしました。
令和6年4月より始まる相続登記義務化を前に、何世代も前の方名義の不動産についての相続登記手続きと合わせ、不動産の処分についてのご相談も多数寄せられています。ですが残念ながら、ご紹介した手段でも手放せない不動産が多数存在しているのが現状です。
今、ご所有の不動産はどのような状況でしょうか。また、将来ご家族はどのように不動産を維持、管理されていかれるご予定でしょうか。
司法書士法人いわさき総合事務所では、相続された不動産について、包括的にご相談を承ります。
令和6年4月1日から相続登記が義務化され、怠った場合は過料が科されることになりました。
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