マイナンバーカードと司法書士業務を考える~しほうサインの開始を受けて~
マイナンバーカードは2016年度(平成28年)から交付が開始されています。
2025年1月時点、日本人口に対する保有率は約75%、およそ国民の4人に3人が保有しています。
(出典:マイナンバーカードの申請・交付・保有状況)
2023年時点で既に保有する人数としては運転免許証を超えているマイナンバーカードは、2024年12月よりマイナ保険証が導入されたことに続き、2025年3月にはマイナ免許証が開始するとされ、ますます利便性が高まっています。
司法書士が取り扱う手続きにおいても、マイナンバーカードは重要な役割を果たします。
本人確認資料
登記・供託・訴訟等の手続では、依頼者様の本人確認及び意思確認を要します。
司法書士は、司法書士法及び司法書士会会則に基づき、依頼者様の権利保護ならびに手続等の適正を図るために、司法書士業務の受託に際し依頼者の皆様との面談その他の方法により、本人確認ならびに依頼の内容、及び意思の確認を行う必要があります。
「犯罪による収益の移転防止に関する法律(平成20年3月1日施行)」においても、司法書士の業務の一部(宅地・建物の売買取引、会社設立等の特定業務)について、本人確認及び記録作成等が義務付けられています。
その際の本人確認資料としては、顔写真入りの身分証明書を提示いただき、その写しを保管します。
運転免許証(運転経歴証明証含む)やマイナンバーカードをご用意いただき、券面記載の氏名、住所、生年月日、顔写真、有効期限をもって確認を行います。顔写真入りの身分証をお持ちでない場合は保険証等が2点必要となります。
なお、マイナンバーカード裏面記載の個人番号については取り扱うことができる者が限定されており、また裏面には登記手続き上確認すべき情報の記載はないため、裏面の提供は不要です。
コンビニ交付制度
コンビニ交付は、マイナンバーカードを利用して市区町村が発行する証明書(住民票の写し、印鑑登録証明書等)が全国のコンビニエンスストア等のキオスク端末(マルチコピー機)から取得できるサービスです。
市区町村が発行する証明書である住民票の写し、印鑑登録証明書は司法書士が取り扱う登記手続きで頻繁に必要となる書類です。
基本的にご本人様に期日までにご用意いただくこれらの書類は、従来市区町村の交付窓口でしか発行ができませんでしたが、マイナンバーカード公布と同時にコンビニ交付制度が導入され、全国の自治体で導入が進んでいます。
住民票を置く自治体だけでなく、原則、全国のコンビニで早朝夜間(午前6時半~午後11時)や休日も利用できると、窓口利用に比べ非常に利便性が高い制度です。
またコンビニ交付の利用促進の取組として、マイナンバーカード普及促進に加えて一部市町村において、窓口における証明書交付とコンビニ交付の手数料の差別化が行われています。
広島市も2023年よりその対象です。(詳しくはこちら。)
全国的に見ると、奈良市は「証明書コンビニ交付手数料の1通10円」を導入しています。その結果、コンビニ交付の発行割合は全体の46.4%を達成するなど、手数料の引き下げをきっかけに新しい仕組みが市民の方々に広く浸透しつつあることが伝わります。
しほうサイン
登記手続き及び司法書士業界に、画期的な仕組みが2024年11月より導入されています。それが「しほうサイン」です。
「しほうサイン」はマイナンバーカードによる電子署名を実現しています。
登記手続きはオンライン化が進められており、法務局が発行する商業登記電子証明書に基づく電子署名、司法書士電子証明書に基づく電子署名などは既に導入されています。
そもそも電子署名とは、電子文書(PDFで作られた契約書など)が誰によって作成されたのかを明らかにするためにつける“電子的な証拠“です。つまり紙文書に押す印鑑や手書きの署名と同じ役割を果たします。
電子署名は、「電子署名法(電子署名及び認証業務に関する法律)」の第二条第一項で、次のように定義されています。
この法律において「電子署名」とは、電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)に記録することができる情報について行われる措置であって、次の要件のいずれにも該当するものをいう。 一 当該情報が当該措置を行った者の作成に係るものであることを示すためのものであること。 二 当該情報について改変が行われていないかどうかを確認することができるものであること。 |
言い換えると次のようになります。
・電子署名は、電子文書を作成したとされる名義人が、本人の意志で作成したものであること(本人性)を証明しているもの
・電子署名は本人性が示され、かつ改ざんされていないこと(非改ざん性)を証明できるもの
紙文書では、作成者の押印や手書きの署名によって、文書の作成名義人を証明します。しかし、電子文書に紙文書のような作成者の押印や手書きの署名を付与することはできません。そのため、別の方法で「本人性」と「非改ざん性」を証明する必要があります。
電子署名は、公的機関や民間事業者の認証局が発行する「電子証明書」を利用して作成する本人証明の署名を指します。
つまり、電子署名は印鑑、電子証明書は印鑑証明書にあたる役割を担います。
マイナンバーカードによる電子署名が可能な「しほうサイン」を利用することにより、
・所有権移転登記委任状
・遺産分割協議書
・取締役会議事録
など、登記に関係する書類に対して電子署名が可能です。
また、複数の関係者で電子署名を行う必要がある場合、司法書士側から一括して電子署名を依頼できます。
司法書士から送信される電子署名依頼メールをスマートフォンで開封し、ダウンロードした専用アプリを用いて電子署名を行っていただけます。
実印や印鑑証明書の偽造技術が向上する昨今においての対策としても、マイナンバーカードによる電子署名が可能な「しほうサイン」の普及が望まれます。
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