海外在住の売主(在外邦人等)が売主となる不動産登記について
署名証明(サイン証明)とは
売買による所有権移転登記において、売主は登記のための委任状に実印を押印し、印鑑登録証明書を添付する必要があります。しかしながら、日本国内に住民票がない在外邦人等は、市区町村発行の印鑑証明書を取得することができません(※1)。そのような場合に、実印・印鑑証明書の代わりに使用されるのが、署名(サイン)証明(および拇印証明)です。海外在住者と遺産分割協議を行い相続登記する際などにも利用されます。なお、住民票にかわる書類としては、在留証明(外国における住所を証明する書類)があります。
※1 在外公館によっては印鑑登録・印鑑証明の発行を受け付けています。詳しくは各大使館などにご確認ください。
「貼付型(合綴型)」と「独立型」
署名証明とは、日本に住民登録をしていない海外に在留している方に対し、日本の印鑑証明に代わるものとして発給されるもので、申請者の署名(及び拇印)が確かに領事の面前でなされたことを証明するものです。署名証明には、「貼付型(合綴型)」と「独立型」の二種類がありますが、不動産登記においては、委任状等の署名を行う私文書に署名証明を貼付し(あるいは綴り合せて)、割印を行う「貼付(合綴)型」が専ら用いられます(※2)。
※2 「単独型」の証明の場合、登記官が委任状と署名証明を見比べ、その筆跡の一致を確認する必要が生じるため、登記申請には通常「貼付型」が求められます。なお、「貼付型」の署名証明を取得する際は、署名する書類を大使館等の在外公館に持参し(事前に署名せず)、大使館職員等の面前で署名する必要がありますので、ご注意ください。
登記原因の日付と委任状の作成日について
署名証明を用いて登記申請の委任状を作成し、売買の当日に登記申請を行う場合、大使館での手続きや国際郵便でのやりとりが必要になることから、委任状は必然的に売買の日より前に作成されることになります。すなわち、登記原因の日より前の日付で作成された委任状で登記を行うことになり、登記申請に支障はないのかという問題が浮上します。
この点、日司連不動産登記法改正等対策部による見解として、「すべての登記事項が委任状に記載されている場合」、登記原因より前の日付の委任状であっても問題ない、という回答があるようです(月報司法書士2013年11月号(No.510)53頁)。つまり、登記原因証明情報を援用する形式の委任状は使用することができないので注意が必要です。
包括委任状の活用
しかしながら、上記のような副本型の委任状を作成しようとすると、委任状の作成時に、登記原因日(売買の日)を含めすべての登記事項をあらかじめ記載する必要があります。そこで、売買の日が確定していなかったり、不確定要素がある場合には、売主が日本国内在住の代理人に売買そのものを包括委任することも一つの手段です。この場合に在外邦人である売主は、所有権移転登記を含めた包括委任状をあらかじめ作成し、これに署名証明を受けます。登記申請の際には、司法書士は代理人から登記原因証明情報や登記のための委任状を取得し、署名証明された包括委任状と個別的委任状を法務局に提出します(※3)。この方法であれば、取引の状況に応じて柔軟な対応をすることができるでしょう。
※3 このとき、代理人の押印は実印である必要はなく、印鑑証明書は必要とされません。
ただし、いずれの方法をとる場合にも、事前に管轄法務局に照会を行うほうがよいと思います。また、権利証を紛失している場合は、包括委任状があったとしても本人確認情報は登記名義人である売主本人について作成する必要がありますので、注意が必要です。
以上、ご参考になれば幸いです。
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