判決による登記の登記申請例
前回は、判決による登記の制度や仕組みを簡単に述べさせていただきました。※前回お役立ち情報はコチラ。
本日は、前回の事例をもとに、具体的な申請書の作り方や関連する先例をご説明します。
前回の事例内容のおさらいも兼ねて、具体的な時系列を加えて整理してみました。
➀令和2年2月2日、AさんがBさんへ不動産を売却した。
➁令和3年3月3日、Aさんが登記に協力してくれないため、BさんがAさんに対して、所有権移転登記請求訴訟をしました。
➂令和3年4月4日、Bさんは、➁の訴訟で勝訴しました。
➃令和3年5月5日、➁の勝訴判決が確定しました。
→これで、やっとBさんは登記の申請ができるようになりました。
そこで、Bさんがこれから、『どのように登記の申請を準備していくのか?』、『どのような注意点があるのか?』についてご紹介します。
目次
登記の申請書(申請情報)の書き方
早速ですが、具体的な申請書の記載内容を紹介しましょう。
さて、上記の登記申請書に色を付けた部分が今日のお話しするポイントに関わってきます。
・登記申請書の『登記原因証明情報』とは?
Bさんは、令和2年2月2日に、Aさんから不動産を買いました。
その日付や当事者関係や不動産の内容、判決による登記をしていいもの(※)を法務局に明らかにする内容を、
『登記原因証明情報』と言います。
今回の『登記原因証明情報』は、 判決書正本とその判決の確定証明書 となります。
※判決による登記をしていいものとは?
前回のお役立ち情報(コチラ)で、判決は、Aさんの申請意思を意味すると説明しました。
すなわち、下記公式が成立します。
判決(判決書正本とその判決内容が確定したと裁判所が証明したもの)= Aさんの不動産の権利証(登記識別情報通知)、委任状、印鑑証明書
その公式を使った申請をしていいと証明する必要をすることで、Aさんの申請書類等を添付する必要がなくなるのです。
・判決書正本とその判決の確定証明書の中味について
判決書には主文と理由が記載されます。
分かりやすくするのなら、AさんはBさんに不動産を売却したのだから(=判決の理由)、
Bさんの名義にしなさい(=主文)という内容が記載されます。
なお、確定証明書とは、裁判所が下した判決が確定していることを証明する書類です。
判決書の主文と理由のうち、主文が重要です。
なぜなら、主文には、既判力(蒸し返しのできない力、裁判所のお墨付き)が与えられます。
逆に、理由・そのほかの部分にはその既判力がありません。
そのため、主文に、Aさんの申請意思や判決による登記ができるという内容をしっかり記載する必要があります。
そこで、今回の事例では、以下の通りと記載すべきです。
「被告(Aさん)は原告(Bさん)に対し、別紙目録記載の不動産について、
令和2年2月2日売買を原因とする所有権移転登記手続きをせよ」
・判決書の主文に登記の原因日付が入っていないことがある場合
とはいうものの、たまにその判決書主文の中に原因の日付がすることがあります。
その理由には、弁護士さんがその後の登記手続を想定していない場合もありますし、
そもそも原因日付そのものが分からないこともあります。
ただし、せっかく裁判所が下した判決なので、登記申請を受け付ける登記所は、
日付が入っていない判決文でも下記のように記載することで、妥協的ながらも申請の受付を許容しています。
『年月日不詳売買』
先例:昭和34年12月18日 民事甲第2842号
→(趣旨)売買による所有権移転の登記を判決によってする場合で、
判決文中に売買の日付が表示されていない場合は、原因及び日付を『年月日不詳売買』とする。
『年月日判決』※日付は判決確定の日
→(趣旨)判決による登記の登記原因は、判決書に、その記載がないとき、『年月日判決』とする。
※但し、原因による
さて本日はここまで。最後まで見ていただきありがとうございました。
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