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事前提供方式を利用した動産譲渡の登記について

※本記事は令和3年9月時点での情報です。

前回の記事で、太陽光発電事業への担保設定について取り上げました。
本日は、その中でも、事前提供方式を利用した、動産譲渡担保の登記についてご紹介します。

前編 2021/9/14更新

動産譲渡登記とは

動産譲渡担保とは、動産を債権者に譲渡して借入れを行い、債務を弁済したときは動産の所有権が債務者に戻るものの、弁済しないときは動産の所有権が確定的に債権者に帰属するという担保手法をいいます。動産譲渡登記がされると当該動産の譲渡について引渡しがあったものとみなされ、対抗要件が具備されます。したがって、同一動産について二重譲渡がされた場合の譲受人相互間の優劣は登記の先後によって決定され、また動産譲渡登記と引渡しが競合した場合の譲受人相互間の優劣は、登記がされた時と引渡しがされた時の先後によって決定されることとなります。

管轄法務局は不動産登記と異なり、下記の1か所のみになっています。

動産譲渡登記所:東京法務局民事行政部動産登録課       
〒165-8780 東京都中野区野方一丁目34番1号        
  TEL 03-3389-3362        
  FAX 03-3389-3771  

   

申請方法

動産譲渡登記には、次の3つの申請方法があります。

1.出頭
当事者もしくは代理人が東京法務局動産登録課(東京都中野区)に出頭して申請する方法です。
申請に不備がなければ即時に登記が完了します。
2.郵送等
東京法務局動産登録課に書留郵便等により送付して申請する方法です。
郵送等の場合は、申請書受領日の翌営業日の受付・登記完了となります。
3.オンライン
申請書・申請データすべてをオンラインで送信し、申請する方法です。
申請に不備がなければ即時に登記が完了します。
ただし、譲受人・譲渡人双方の電子署名が必要です。

 

以上の3つの方法のうち、オンライン申請では、出頭や郵送の手間がなく登記が即日受付されるというメリットがありますが、電子署名の普及率の問題から、利用者はあまり多くないようです。一方、出頭や郵送等で申請を行う場合、以前は申請データを電磁的記録媒体(CD-R等)に記録し持参もしくは送付する必要があり、申請書や申請データに不備がある場合は、ただちに却下(もしくは取下)となってしまうという大きな難点がありました(※1)
※1 不動産登記と異なり、補正(不備の訂正)という制度が存在しません。

そこで平成26年に創設されたのが、申請データを法務省の「総合用申請ソフト」を使用し法務局に直接送信する「事前提供方式」です。事前提供方式を利用することで、送信時に形式的なデータチェックを受けることができ、また申請データについて法務局と事前相談を行い、適宜修正し再送信することも可能になります。
事前に送信したデータは、登記申請書に二次元コードと事前提供番号を添付することで申請と関連付けされます。

当事務所では、この事前提供方式を利用し、郵送による登記申請を行っています。

 

事前提供方式の流れ

はじめに、法務省のHPから専用ソフト「申請データ作成ツール」「申請人プログラム」「申請用総合ソフト」の3つを入手します。

まずは、「申請データ作成ツール」を使用し、申請データをXMLファイルで作成します。(この際、窓口・送付申請用のひな形を使用します)。つぎに「申請人プログラム」を使用し、申請データを送信用に圧縮・変換します(「事前提供データ」)。その後、事前提供データを「申請用総合ソフト」を利用し、法務省に送信します。この際、「二次元コード」(添付書類8)が発行されます。事前提供データを譲渡登記所に送信すると申請データの形式チェックが行われます(送信後10分程度で結果が送信されます。なお、受付時間外に送信した場合は翌営業日の朝)。形式的にエラーがあれば通知されるため、適宜修正・再送信を行います。形式チェックがぶじ完了すると、形式チェックの結果及び事前提供番号等が記載された「お知らせ」が発行されます(添付書類9)。

以上の作業を予め行ったうえで、登記申請書ほか、添付書類を法務局に送付(もしくは持参)します。

添付書類は次の機会にくわしくご紹介します(後編に続く)。

 

後編 2021/10/19更新

前編では、事前提供方式を利用した、動産譲渡担保の登記についてご紹介しました。今回は登記申請の際の添付書類について詳しく紹介します。

添付書類について

法務局に送付(持参)する書類は下記のとおりです。

1.登記申請書 
譲受人もおよび譲受人、司法書士等が代理で申請する場合は申請代理人が押印。
登録免許税として収入印紙を貼付します。
免許税は1件(※2)につき7,500円、ただし令和3年9月時点。
※2 当事者、登記原因およびその日付が同一であれば、最大で1000件の動産まで一括して1件で申請することができます。
2.代理権限証書(委任状等)
代理申請の場合に必要です。
官庁又は公署の作成したものについては,作成後3か月以内のものに限ります。
3.取下書
必須ではありませんが、実務上申請と同時に取下書を提出します。
申請に不備があった際に補正という取扱いがないため、取下書が添付されていない場合は即時に申請が却下されてしまうためです。
4.譲渡人の代表者の資格証明書(登記事項証明書)
作成後3か月以内のものに限ります。
代表者の資格証明書(登記事項証明書)は会社法人番号等を記載することで添付を省略することができます。ただし、商業・法人登記を申請中であるなどの事情で、動産・債権譲渡登記所の登記官が当該法人の登記情報を確認することができない場合には,添付省略はできません。下記6および登記事項証明書の請求時も同様です。
5.譲渡人の代表者の印鑑証明書(登記所が作成したもの)
作成後3か月以内のものに限ります。
動産譲渡登記において、会社法人番号等による省略はできません。
6.譲受人の代表者の資格証明書(登記事項証明書)
譲受人が法人の場合に必要です。作成後3か月以内のものに限ります。
なお、譲受人が自然人の場合には住民票の写しが必要です。
7.存続期間が登記の日から10年を超えるときは,その存続期間を定めるべき特別の事由があることを証する書面
→動産譲渡担保契約書および金銭消費貸借契約書(原本もしくは原本証明を施した写し)など
登記の存続期間が10年を超過することについて当事者の合意があるだけでは不足で、被担保債権の最終弁済期が10年を渡過する証明が必要とされています(法務省のQ&A13参照)。原本を提供できない場合は、当事者の原本証明を施した写しの提供が必要です(※3)
※3 動産譲渡登記において、原本還付という制度はありません。
なお原本証明について、以前は譲渡人・譲受人双方の実印による証明が求められましたが、現在は譲渡人の証明のみで足り、また必ずしも実印による証明でなくともよいようです(詳細は法務局にご確認ください)。
また、不動産登記と異なり、申請代理人が原本証明を施すことはできません。
8.事前提供したデータの二次元コード
事前提供データを送信する際に発行されます。
9.事前提供したデータの形式チェック結果および確認番号の「お知らせ」
事前提供データが法務省に到達すると発行されます。

 

登記事項証明書の交付請求について

なお、譲渡登記の完了と同時に当該譲渡登記に係る登記事項証明書の交付を請求することができます(いわゆる「同時申請」)。この場合の必要書類は以下のとおりです。

1.登記事項証明書(個別事項証明)請求書 
譲受人もしくは譲受人、代理申請の場合は申請代理人が押印。
手数料として収入印紙を貼付します。
手数料は動産1個につき800円/1通。一括証明の場合は動産の個数が1個を超えるごとにその超える個数×300円/1通。
同時申請のときは「個別事項証明登記番号・通番指定検索用」の請求書を使用します。
2.申請人(譲受人もしくは譲受人)が法人であるときは,代表者の資格証明書
譲渡に係る動産の譲渡人,譲受人の商号(名称)又は本店(主たる事務所)(個人の場合は氏名又は住所)が登記上の表示と異なっている場合には,その変更を証する書面(法人の場合には履歴事項証明書又は登記簿謄本,個人の場合には住民票の写し等)が必要になります。
3.代理権限証書(委任状等)
代理申請の場合に必要です。
作成後3か月以内のものに限ります。
4.譲渡人の代表者の印鑑証明書(登記所が作成したもの)
作成後3か月以内のものに限ります。
5.返信用封筒
郵送等で請求する場合は郵券等を貼付し、返送先を記載した封筒を添付します。

なお、同時申請ではなく譲渡登記について登記事項を調査する場合の方法については、以前の記事をご覧ください。

今回は、動産譲渡の登記を例に取り上げましたが、債権譲渡の登記においても、同様の流れで事前提供方式を利用することができます。ご参考になれば幸いです。

参考(法務省HP)

動産譲渡登記について
登記申請の手続きについて
申請データの作成方法、作成ツールについて
証明書の交付請求について
Q&A

 

関連ページ:

 

 

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