所有権更正登記後の登記識別情報の通知
この“登記識別情報通知”は、従来「権利証」「権利書」などと呼ばれていたもので、取得した不動産の権利について、登記義務者(例えば売主)として登記手続きをする場合には、原則として法務局に提供が必要とされる重要書類です。
この“申請人自ら登記名義人となる場合”とは、買主が申請人として所有権移転登記を行った場合が代表例で、買主に対して登記識別情報が通知されます。
登記識別情報が通知される場合、権利を処分する登記手続きをする際、登記識別情報を提供しなければ事前通知等(不動産登記法第23条)の手続きを経る必要があり、この手続きを踏まない場合には申請が却下されるため、登記識別情報が通知されるケースを確実に抑えておく必要があります。
登記権利者及び登記義務者が共同して権利に関する登記の申請をする場合その他登記名義人が政令で定める登記の申請をする場合には、申請人は、その申請情報と併せて登記義務者(政令で定める登記の申請にあっては、登記名義人。次条第1項、第2項及び第4項各号において同じ。)の登記識別情報を提供しなければならない。
不動産登記法第23条(事前通知等)
1 登記官は、申請人が前条に規定する申請をする場合において、同条ただし書の規定により登記識別情報を提供することができないときは、法務省令で定める方法により、同条に規定する登記義務者に対し、当該申請があった旨及び当該申請の内容が真実であると思料するときは法務省令で定める期間内に法務省令で定めるところによりその旨の申出をすべき旨を通知しなければならない。この場合において、登記官は、当該期間内にあっては、当該申出がない限り、当該申請に係る登記をすることができない。
2 登記官は、前項の登記の申請が所有権に関するものである場合において、同項の登記義務者の住所について変更の登記がされているときは、法務省令で定める場合を除き、同項の申請に基づいて登記をする前に、法務省令で定める方法により、同項の規定による通知のほか、当該登記義務者の登記記録上の前の住所にあてて、当該申請があった旨を通知しなければならない。
3 前二項の規定は、登記官が第二十五条(第十号を除く。)の規定により申請を却下すべき場合には、適用しない。
4 第一項の規定は、同項に規定する場合において、次の各号のいずれかに掲げるときは、適用しない。
① 当該申請が登記の申請の代理を業とすることができる代理人によってされた場合であって、登記官が当該代理人から法務省令で定めるところにより当該申請人が第一項の登記義務者であることを確認するために必要な情報の提供を受け、かつ、その内容を相当と認めるとき。
② <略>
目次
① 持分のみの更正のケース(A持分2分の1、B持分2分の1→A持分3分の2、B持分3分の1)
ちなみにこの更正登記の際、住所証明情報(住民票の写しなど)の提供は不要です。
② 所有権移転登記を所有権一部移転登記に更正するケース(Aに全部移転→Aに持分2分の1のみ移転)
③ 所有権一部移転登記を所有権全部移転登記に更正するケース(Aに持分2分の1を移転→Aに所有権全部を移転)
④ Aに全部移転→Aに2分の1、Bに2分の1移転に更正するケース(A単独所有ということで登記したが、実はAとBが共同で購入していた)
⑤ A持分2分の1、B持分2分の1取得→A単有に更正するケース(Bは買主になっておらず、A単独所有だった)
所有権更正登記後の登記識別情報の通知は、主登記・付記登記のような登記の形式(そもそも所有権更正登記は必ず付記登記でされますが…)や、更正登記申請の際の住所証明情報の提供の要否と連動したものではなく、感覚的に捉えておけば正解に辿り付けるものでもありません。
上の登記記載例を見ていただくと、次の二つの条件を満たすときに登記識別情報が通知されることになります。
1.所有権更正登記によって権利を得る又は増える者であること
2.所有権更正登記の登記事項欄に、住所が表示される者であること
ちなみに、所有権更正登記の際に住所証明情報の提供を要するのは、”登記の実行により初めて所有権登記名義人として登記される者について”です。
これらの他、前登記名義人の関与や利害関係人の承諾など、所有権更正登記は、不動産登記法の理解のバロメータとなるもので、司法書士試験受験生は必ず整理しておく必要があるでしょう。
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