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未成年者の遺産分割協議と取り消すことができる行為の追認

1.制限行為能力者制度

民法では、成年者と未成年者には厳格な区別があります。
成年者は自ら単独で有効に契約や遺産分割などの法律行為を行うことができますが、未成年者の間は、以下の3つの方法を取らなければ、その法律行為を取り消すことができます(民法5条1項・2項)。
・親権者の同意を得て行う
・事後に親権者がその法律行為を追認する
・親権者が代理して行う

この制度は「制限行為能力者制度」といいます。
制限行為能力者制度は、判断能力が不十分な者を保護するための制度ですが、法律行為の相手方としては、「のちのち取り消されるリスク」を考慮して、未成年者との取引は慎重にならざるを得ません。
そのため、未成年者は取引の機会を制限されることが多いと思います。

 

2.未成年者が相続人に含まれる遺産分割協議

ところで、未成年者が遺産分割協議に参加することはできるのでしょうか?

未成年者も一定以上の年齢(※)に達していれば遺産分割協議に参加することもできますが、その遺産分割協議は“取り消すことのできる遺産分割協議”となるため、この遺産分割協議書だけを用いた相続登記の手続きは認められません。

※ 遺産分割協議書には、印鑑証明書の添付が必要なので、実質的には印鑑証明書の発行を受けることのできる15歳以上であることが必要となります。

そのため、遺産分割協議には親権者が代理して参加するか、未成年者自身が参加した遺産分割協議に親権者が同意したことを証する文書をあわせて準備する必要があります。

ただし、親権者自身もその遺産分割協議の参加者の場合、親権者と未成年者の間に利益相反が生じることとなり、親権者が未成年者を代理して遺産分割協議に参加しても、それは無権代理行為であり、その遺産分割協議は無効となります(民法113条)。
そのため、親権者は対象となる未成年である子の人数だけ家庭裁判所に特別代理人の選任を申し立てる必要が出てきます。

 

3.取り消すことのできる行為の追認

今年(令和4年)の4月1日に成人年齢が18歳に引き下げられるのに伴い、4月1日に多くの新成人が誕生します。
4月1日に成人になるのは、2002年(平成14年)4月2日~2004年(平成16年)4月1日生まれの方です。

民法では、法律行為を行った未成年者が成年者となった後、自らが未成年者の頃に行った法律行為を、親権者を介在させずに追認することができるようになります(民法124条)。

 

仮に、亡き父親名義の不動産について、母親が不動産会社と先に不動産の売却の方向で話を進めており、急いで相続登記を進めたいが、相続人に未成年者が含まれているケースで、かつ、その未成年の子が4月1日に成人になる場合について考えてみます。

この場合、いくつか方法が考えられます。

ひとつは、法定相続分でそのまま相続登記を行い、相続人全員が売主となって売却する方法です。
すでに母親が単独で買主と契約を締結している場合、他の相続人が相続する部分については他人物売買となるため、その部分も含めて買主に所有権が移転させる担保責任を負います。
一般的には、すでに締結済みの売買契約に、母親以外の他の相続人を売主に含めることとする覚書を、すでに売買契約の当事者と新たに売主となる母親以外の他の相続人全員で取り交わすこととなります。

次に、今の段階で未成年者を含めて遺産分割協議を行い、4月1日になった時点で、遺産分割協議の当時、未成年者だった方自身から「遺産分割協議を追認する旨の書面」を取り付けて申請する方法です。

また、遺産分割協議書は1枚に全員が署名・押印することまでは求められていないため、同じ内容の「遺産分割証明書」に相続人それぞれが署名捺印する方法も認められています。
現時点で未成年者である相続人を除いて「遺産分割証明書」を準備しておき、4月1日に新成人となった相続人から「遺産分割証明書」を受領する方法も考えられます。
「遺産分割証明書」は相続人が遺産分割があったことを自認する書類であり、未成年者の時点で遺産分割協議がされていた場合でも、それを成年者となった段階で追認するという意味を持ちます。

最後に、上で「親権者が未成年である子を代理して遺産分割協議を行うことは、利益相反であり無効」と説明していますが、実は無権代理行為は本人が追認すれば、最初から有効であったものと扱われます(民法116条)。
ただし、追認するには無権代理となった事由が消滅した後にされる必要があるため、今回の場合は未成年者が成年に達していることが条件です。

以上のように様々な方法が考えられますが、追認するかどうかは遺産分割の当時、未成年であった本人が決めることです。
本人の心変わりで結論が変わってしまう浮動的な状態では、取引の安全は図れないため、あくまで成年者となった相続人全員で遺産分割協議を行うべきであることは言うまでもありません。

 

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